Smiley face
「いまこの本を書かないと、という危機感があった」と筆者は話す=2024年5月22日、山本悠理撮影
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 子どもを支配したり、傷つけたりする「毒親」から、どうやって離れれば良いのか。自身も父親からの虐待に苦しんできた当事者が、「毒親絶縁の手引き」(紅龍堂書店)を出版した。公的制度を利用しながら肉親と縁を切る方法を調べる中で見えてきた「社会の危うさ」について、匿名で出版した著者に聞いた。

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 私自身、7年ほど前からDV等支援措置を利用して父から離れています。ただ当初は支援措置の存在さえ知らず、ここにたどり着くまでに、途方もない苦労をしました。

 父は、子どもたちを自分の所有物だと考えていました。虐待は日常茶飯事。母がいなくなった後は、子どものために食事を作ることもなく、家にもほとんど帰りませんでした。

 成人後、一人暮らしを始めると、今度は執拗(しつよう)なストーキングが始まりました。

 何度、引っ越しを繰り返しても、家の場所を探し当て、日付入りの写真を撮影して郵便受けに直接入れられる。「このクズが」と書かれた真っ赤な手紙が入っていたこともあります。

 15年ほど前、初めて弁護士に相談したときに言われた言葉に、がくぜんとしたことを覚えています。

 「親と縁を切る方法は、日本にはありません」

 でも、私は運がよかった。その後、DV問題に詳しい他の弁護士と出会ったり、交通事故でお世話になった警察の方に「それは犯罪です」と教えてもらえたり。

 そこから自分でも資料をかき集め、実際に公的機関とやりとりする中で、親と離れるにはどうすれば良いかがわかってきました。

 ようやく生活が落ち着いてき…

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